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=== Assistant: INTELLECT-3 のテクニカルレポートは、 === INTELLECT-3 のテクニカルレポートは、 * モデルそのもの(106BパラメータMoE、12Bアクティブ) * それを作るためのRLインフラ一式(prime-rl+verifiers+Environments Hub+Prime Sandboxes+512枚H200クラスタ) * 具体的なSFT & RLレシピとベンチマーク結果 をまとめて公開した技術報告です。INTELLECT_3_Technical_Report 以下、セクション順にかみ砕いて解説します。 ==== 1. イントロ:何を目指した仕事か ==== 近年のポストトレーニングは、'''RLVR(Reinforcement Learning with Verifiable Rewards)'''が事実上の標準になりつつあります(OpenAI o3、Grok 4、DeepSeek R1 など)。 しかし OSS 側は、 * RLフレームワーク * RL環境 & 評価 * 安定なトレーニングレシピ がバラバラで、フロンティアラボの社内スタックに比べてまだ弱い、という問題意識があります。INTELLECT_3_Technical_Report そこでこの論文では: # GLM-4.5-Air-Base をベースに、SFT+大規模RLで鍛えたモデル INTELLECT-3 を公開 # そのために作った 非同期大規模RLフレームワーク prime-rl を公開 # さらに RL環境群(verifiers+Environments Hub)とコード実行基盤 Prime Sandboxes、H200クラスタ上の運用方法 まで含めて “再現可能なスタック” として出す というのがメインの貢献です。 図1(p1)では、AIME24/25、LiveCodeBench v6、GPQA、HLE、MMLU-Pro などで、INTELLECT-3 が同クラスの GLM-4.5-Air ポストトレインや DeepSeek R1-0528 を上回り、一部では 3倍以上大きい GLM-4.6 に迫る/肩を並べることを示しています。INTELLECT_3_Technical_Report ==== 2. トレーニングインフラ ==== ===== 2.1 prime-rl:大規模非同期RLフレームワーク ===== prime-rl は 「トレーナ」「オーケストレータ」「推論サービス」 の3役で構成されます(図2, p5)。INTELLECT_3_Technical_Report ====== 2.1.1 アーキテクチャ ====== * Trainer - 役割:ロールアウト+報酬から勾配を計算し、ポリシーを更新 - 実装:PyTorch FSDP2 ベース、torchtitan 由来のコードを使い - データ並列 - テンソル並列 - コンテキスト並列 - MoE向け grouped GEMM - HF 互換モデルをそのまま扱える * Inference サービス - vLLM をバックエンドにした OpenAI互換 API サーバ - 標準 API に加え /update_weights /reload_weights を追加して、 トレーナからの重み更新を受け取れるようにしている。 * Orchestrator(CPUプロセス) - 推論サーバからロールアウトを受け取り、バッチ化して Trainer へ送る - Trainer から新しい重みを受け取って Inference へ配布 - ロールアウト生成には verifiers 環境を使い、Environments Hub 上の任意の環境をそのまま使える この3者が疎結合で動作するため、トレーニング用GPUと推論用GPUを完全に分離しつつ、両者を非同期に回せるのがポイントです。 ====== 2.1.2 非同期オフポリシー学習 ====== * 通常の同期 on-policy RL だと、 「ロールアウト生成 → 勾配計算 → パラメータ更新」が逐次になるため、 推論側がパラメータ更新待ちで止まる。 * prime-rl では オフポリシーを許容して非同期化: - 推論側は少し古いパラメータ θₙ を使い続けてロールアウトを生成 - その間に Trainer 側は θₙ から θₙ₊₁ へ更新を進める * 図3(p6)のように、理想化すれば「常に1ステップ遅れ」くらいの off-policy で走るイメージ。 このとき生じる trainer-inference のミスマッチは後述の 重要度サンプリング+マスキング で制御します。INTELLECT_3_Technical_Report ====== 2.1.3 Continuous Batching & In-Flight Weight Updates ====== 長いチェイン・オブ・ソートやエージェントロールアウトでは、ロールアウト長の分散が大きいため、同期バッチだと一番遅いサンプル待ちでGPUが遊びがちです。 そこで、AReal や PipelineRL で広まった手法を取り入れて: * Continuous Batching - オーケストレータが常に多数のロールアウトリクエストを「プール」しておき、 - ひとつ終わるたび即座に新リクエストを投入 → 推論GPUの利用率を常に高く維持 * In-Flight Weight Updates - Trainer から新しい重みが届くと、推論サーバは一瞬生成を中断して重みをアップデート - その後のトークンは新しいポリシーで生成 - 1本の軌跡の中に複数世代のポリシーが混在し得る - ポリシーの古さが一定ステップ数(max_off_policy_steps)を超えた軌跡は破棄 図4(p7)では、タイムライン上で「ロールアウト開始・終了」と「ポリシー更新」が重なっているイメージが描かれています。INTELLECT_3_Technical_Report ====== 2.1.4 Multi-Client Orchestrator ====== vLLM 標準の multi-node data parallel では、ノード数を増やしてもスループットが頭打ちになったため、 * 各ノードを独立した推論サーバとみなし * オーケストレータが「ノードごとに1クライアント」を持ち、 * ロールアウトをラウンドロビンで振り分ける という カスタム data-parallel 方式を採用。これによりノード数にほぼ線形でスケールしたと述べています。INTELLECT_3_Technical_Report ====== 2.1.5 オンライン難易度フィルタ ====== カリキュラム学習として、 * 問題ごとに過去の解答成功率から easy / normal / hard のプールを作成 * 各ステップでプールごとのサンプリング割合を制御 * さらに「常に成功 or 常に失敗」する問題のロールアウトは破棄 といったオンラインフィルタで、常にちょうど良い難易度帯を出し続けるように調整しています。INTELLECT_3_Technical_Report ====== 2.1.6 長いシーケンス長への対応 ====== RL中に自然とシーケンス長が伸びる(長く考えるようになる)ため、48k〜72kトークン級での訓練を効率的に回す必要があります。INTELLECT_3_Technical_Report アプローチは2つ: # Context Parallelism(Ring Attention系) - Q/K/V をGPU間で回しながら注意を計算 - 256kトークンまで伸ばせたが、 - データ並列度が半減 - 精度劣化も見られた → 本番設定には不採用 # Activation Offloading - 層出力だけ保存し、中間活性はバックプロップ時に再計算(フルチェックポイント) - さらに出力アクティベーションをCPUへオフロード(torchtuneベース) - これで 48k → 72k まで伸ばしつつ、MFU低下は 0.1% 程度に抑えた ====== 2.1.7 Distributed Muon ====== GLM 系はプレトレで Muon optimizer を使っているため、ポストトレーニングでも Muon を継続使用するのがよいとされる一方、Muon は 行列単位の更新 を行うので、FSDP でシャーディングされた勾配にはそのまま適用できません。INTELLECT_3_Technical_Report 試した方法: * ラウンドロビン gather/scatter - 各 rank が一部の行列を集めて Newton-Schulz を計算し、更新済み勾配を scatter - しかしノード数が増えると gather が多すぎて InfiniBand が詰まる * All-to-all ベースの手法(最終採用) - all-to-all collective で勾配を再配置し、Mu on を分散適用 - 実装には Dion の OSS 実装を利用 ====== 2.1.8 Mixture-of-Experts の効率化 ====== MoE 層には torchtitan の実装を使い、grouped GEMM カーネルで専門家をまとめて実行。 * 実験の結果、 - シーケンス長と hidden dim が大きい今回の設定では、 既に grouped GEMM が十分に飽和しており、 - Expert Parallelism(EP)を入れてもスループットがむしろ下がることが分かった(scatter/gather オーバーヘッドのみ増える)。INTELLECT_3_Technical_Report * 図5(p9)のベンチマークでは、 シーケンス長 32k〜65k では 128 experts まではTFLOPSが飽和領域にとどまるため、EPは不要という判断。 推論側では HF の MoE 実装を使う必要があるため、トレーナ側の state dict をHF形式にオンザフライ変換して vLLM に渡す工夫もしています。 ===== 2.2 verifiers と Environments Hub:RL環境の設計 ===== verifiers は '''「RL環境=データセット+ロールアウトロジック+報酬関数」'''として切り出すライブラリです。INTELLECT_3_Technical_Report ====== 2.2.1 環境の構成要素 ====== # dataset - 各行が1問題:入力プロンプト+メタデータ(正解、テストケースなど) # rollout メソッド - 1問題+OpenAI互換クライアントを受け取り、 - ツール呼び出しやマルチターン対話を含む一連の行動を実行 - 学習に必要なログ(token ids, logprobs 等)を収集 # Rubric - 複数の reward function をまとめる抽象 - 各 reward は (プロンプト, completion, 正解, rollout state) を受けてスカラーを返す - 重み付き合成で最終報酬を作る - 投票・ランキングなど相対評価にも対応 # load_environment - 前処理やリソース確保を行い、環境インスタンスを生成するエントリポイント ロールアウトは asyncio ベースで非同期に大量並列実行。図6(p10)のクラス階層では、 * Environment(基底) * MultiTurnEnv(マルチターン) * ToolEnv / StatefulToolEnv(ツール呼び出し) * SandboxEnv(コンテナ実行) * CodeEnv(テストケース付きコード環境) と段階的に機能が拡張される様子が示されています。INTELLECT_3_Technical_Report ====== 2.2.2 prime-rl との統合 ====== * 環境は Python モジュールとして Environments Hub から pip install できる。 * prime-rl のオーケストレータは、モジュール名だけ指定すれば - 環境をロード - ロールアウト実行 - 報酬・logprobs などを Trainer に渡す * EnvGroup によって 複数環境を1つの「大環境」として束ねることができ、 task ID 列でどのサブ環境で評価するかを振り分ける。 ====== 2.2.3 Environments Hub ====== * 環境を 独立したPythonパッケージとして登録・バージョン管理するレジストリ。 * 従来の「トレーニングリポジトリ内のサブフォルダ形式」から脱却し、 - 評価専用の利用 - バージョン固定 - 外部コントリビューション をやりやすくしている。 ====== 2.2.4 評価 ====== トレーニング中のオンライン評価も verifiers 環境で行い、 * オーケストレータが訓練リクエストと評価リクエストを同じ推論プールに投げる * 評価のオーバーヘッドを「訓練の隙間」に隠しつつ、リアルタイムにスコアを監視 という形になっています。 ===== 2.3 Prime Sandboxes:コード実行基盤 ===== ====== 2.3.1 素朴な Kubernetes 実装の限界 ====== 「kubectl exec でエフェメラル Pod に入ってコードを走らせる」という素朴な設計だと、 * API Server & etcd が制御プレーンのボトルネックになり、 * 数千並列のとき 1コマンドのレイテンシが2.5秒まで悪化した、という測定結果が示されています。INTELLECT_3_Technical_Report ====== 2.3.2 Prime Sandboxes のアーキテクチャ ====== これを解決するために、 * Rust 製 Gateway - 軽量HTTP APIで実行リクエストを受付 - Kubernetes APIではなく Headless Service を通じてPod IPを直接解決 - kube-proxy を迂回し、Pod へ直接接続 * 高スループット CoreDNS - Headless Service 由来の大量のAレコード更新に耐えるよう、CoreDNS構成をカスタム * Sidecar パターンのサンドボックスPod - 特権 sidecar が nsenter でターゲットコンテナの namespace 内へ侵入してコマンド実行 - これにより ローカルプロセス並の速度とフルコンテナ隔離を両立 というかなり攻めた設計になっています。INTELLECT_3_Technical_Report ====== 2.3.3 非同期ライフサイクル管理 ====== Pod の Ready 検知も、 * Kubernetes API や Kopf controller でのイベント監視に頼ると、 - 大量Pod同時起動でバックログが溜まり、 - 実際には起動済みなのに「Ready通知が来ない」時間が長くなる ため、 * Kopf はエラーハンドリング等のメンテ専用に縮小し、 * Pod 側の sidecar からトレーニングバックエンドへ Webhook を直接送ることで 起動完了を即時通知する方式に変更。 * この結果、クラスタ負荷に関わらず 起動から Ready まで常に < 10 秒に抑えられたと報告。INTELLECT_3_Technical_Report ====== 2.3.4 イメージ配布と高密度化 ====== イメージ配布は2段構え: # 専用レジストリ+Lazy Pulling - 動的環境向け - エントリポイントに必要なレイヤだけ先読みし、残りはバックグラウンドでストリーミング # Warm Pool - 標準的なランタイムイメージ用に、常に起動済みPodをプール - 取得即実行可能 さらに、1ノードに256サンドボックスを詰め込むことを目標とした bin-packing スケジューラと、 * RLは「短時間CPUスパイク+長時間待ち」のワークロードなので、 * CPUを Burstable QoS で大幅オーバーサブスクライブ という設計でリソース効率を高めています。INTELLECT_3_Technical_Report ====== 2.3.5 セキュリティ ====== * ランタイムには gVisor (runsc) を採用して、ユーザ空間カーネルでホストを隔離 * ネットワークポリシーで外部通信を制限 * 必要に応じて GPU をマウントしたサンドボックスも支援 ===== 2.4 GPUクラスタ運用 ===== * 512枚の NVIDIA H200(64ノード) * ネットワーク:400Gbps NDR InfiniBand(ConnectX-7)、AllReduce の tail latency を監視し、160GB/s 以上を目標 * 構成管理:Ansible による IaC * ジョブ管理:Slurm + cgroup v2(ジョブ終了時に cgroup ごとプロセス凍結・破棄) * ストレージ:Lustre(高スループット)+NVMe-NFS(メタデータ多め用途) * 監視:DCGM → Prometheus、Xid エラーや熱スロットリング検知でノードを事前に drain と、かなり “HPC すぎる” レベルまでチューニングされています。INTELLECT_3_Technical_Report ==== 3. INTELLECT-3 の具体的な学習 ==== ===== 3.1 環境ミックス ===== 6カテゴリの環境を組み合わせています。INTELLECT_3_Technical_Report # Math(i3-math, 21.2k問) - 元データ:Skywork-OR1, Acereason-Math, DAPO, ORZ-Hard などから高難度問題を抽出 - 検証: - まず math-verify で記号的に採点 - 間違い判定になったものは CompassVerifier-7B(LLM judge)でも再チェック → ルールベースの偽陰性を補正 - 難易度付け:Qwen3-4B-Thinking が8サンプル生成したときの成功率で easy / normal / hard に分ける # Code(i3-code, 8.6k問) - Python 単発プログラミング問題 - SYNTHETIC-2 データセットをベースに、1問あたり最大15テストケースを Prime Sandboxes で実行 - サンドボックスが壊れた場合はその completion をマスク - 難易度付けは Qwen3-4B-Instruct の成功率で # Science(i3-science, 29.3k問) - MegaScience からフィルタした物理・化学・生物など - math-verify+LLM judge の二段構えで採点 - 難易度付けも Qwen3-4B-Instruct # Logic(i3-logic, 11.6k問) - SynLogic 由来の29種類の論理パズル/ゲーム(ブール式評価、クロスワード、数独、マインスイーパーなど) - 同様に Qwen3-4B-Instruct の成功率で難易度付け # Deep Research(deepdive 環境) - Serper ベースの web search tool、click / open tool、finish tool を使う「ウェブ調査」環境 - z-AI DeepDive データセットから - SFT 用軌跡 1k - RL 用 2.2k - 検証として、Qwen3-4B-Instruct を SFT→RL した小実験を行い、 図7(p15)のように RL 中に平均報酬がちゃんと上がることを確認(環境実装の検証)。 # Software Engineering(deepswe / mini-swe-agent-plus) - R2E-Gym と mini-swe-agent-plus をベースにしたエージェント scaffold を2種類用意 - サンドボックス内で - Bash 実行ツール - ファイル編集ツール を使ってGitHubリポジトリのバグ修正を行う - 最大200ターンまで行動可、最後にテストスイートで成功判定 - 2万以上のGitHubリポを事前にインストールしたイメージを Prime Sandboxes 上に用意 ===== 3.2 Supervised Fine-Tuning(SFT) ===== SFT は2段構え。INTELLECT_3_Technical_Report ====== ステージ1:一般チャット+Reasoning SFT ====== データソース(表1, p16): * NVIDIA Nemotron Post-Training Dataset v1 の - OpenReasoning-Math(200万例, 78.1Bトークン) - OpenReasoning-Code(190万例, 94.3B) - OpenReasoning-Science(31万例, 32B) - OpenReasoning-Tool(80万例, 3.8B) * AM-DeepSeek-R1-0528-Distilled の - General Chat(95.2万例, 8.4B) - Instruction Following(5.4万例, 0.4B) いずれも DeepSeek-R1-0528 由来の高品質な思考トレースを含む合成データ。 設定: * コンテキスト長 65k * 1エポック、1ステップあたり ≈33M トークン * Optimizer: Muon, weight decay 0.01 * LR: 5e-5(300ステップで 1e-8 から線形ウォームアップ) * FSDP world size=64, DP replicate 8 → 512 GPUをフル活用 * 図8(a) の loss カーブはスムーズで、発散やスパイクは見られない ====== ステージ2:Agentic SFT ====== 目的: * ツール利用 * 長時間エージェント行動 * 65k 以上の長コンテキストへの慣れ 追加データ: * SWE-Swiss(SWEエージェントタスク) * Toucan Tool(ツール利用データ) * Environments Hub 上の各環境で DeepSeek-R1-0528 を走らせて作った軌跡 設定: * ステージ1の最終チェックポイントから再開 * 文脈長 98k(Context Parallelism により拡張) * 2エポック、800ステップ * Muon, LR 5e-8 から線形減衰 * 図8(b) の loss も安定 ====== チャットテンプレートと「常に思考する」設計 ====== * Qwen3 / GLM 系に似た <|system|>, <|user|>, <|assistant|>, <|im_start|>, <|im_end|> の構造 * ツールコールは XML 風タグ * 特徴的なのは - ユーザ側には「思考モードの切り替え」を見せず、常に内部で<|think|>トークンを使って思考させる - multi-turn で reasoning_content を自動パースし、前ターンの思考をうまく継続できるようにしている - 実際に使うときは qwen3_coder tool parser と deepseek_r1 reasoning parser を使うことを推奨 ===== 3.3 Reinforcement Learning フェーズ ===== ====== 設定 ====== * バッチサイズ:256プロンプト × 各プロンプト16ロールアウト * 最大コンテキスト長:65,536 * オンライン難易度フィルタ+「easyプールのpass率1問題を除外」 * max_off_policy_steps = 8 * Optimizer: Muon, LR 1e-6 * クラスタ構成: - 60ノード(計480 H200)を使用 - うち 16ノードを Trainer、44ノードを Inference に割り当て(≒1:3) - in-flight weight update ありの場合、1ステップ ≈1500秒 なしだと 2倍以上かかる ====== 学習アルゴリズム:masked importance sampling(IcePop系) ====== 目的:非同期 off-policy による trainer-inference ミスマッチを安全にコントロールすること。INTELLECT_3_Technical_Report 数式的には、N本のロールアウト {y_i} に対して * 重要度比 ri,t=πtrain(yi,t∣x,yi,<t;θ)πinfer(yi,t∣x,yi,<t;θold)r_{i,t} = \frac{\pi_{\text{train}}(y_{i,t}|x,y_{i,<t};\theta)}{\pi_{\text{infer}}(y_{i,t}|x,y_{i,<t};\theta_\text{old})}ri,t=πinfer(yi,t∣x,yi,<t;θold)πtrain(yi,t∣x,yi,<t;θ) * これを [α, β] = [0.5, 5] の範囲内にあるトークンだけ採用し、それ以外はマスク(寄与0) * ロールアウト i の報酬 Sᵢ に対し、同一プロンプト内で平均を引いた A^i,t=Si−mean(Sj)\hat{A}_{i,t} = S_i - \text{mean}({S_j})A^i,t=Si−mean(Sj) をトークンごとの advantage とみなす * さらに どこか1トークンでも重要度比が非常に小さい(< 1e-5)ロールアウトは全体を破棄 という設計です。 これは CISPO に近い発想ですが、clipping ではなく masking にすることで、比率が暴れたサンプルがノイズとして残るのを防いでいる、と説明しています。図10(p18)では、GSPO と CISPO 系アルゴリズムを比較したとき、GSPO が高 off-policy 設定(async-8)で突然 reward 崩壊を起こす様子が示され、これが実験上の安全性問題になると述べています。 ====== オンライン評価 ====== 図9(p17)では、AIME24/25, HLE, LiveCodeBench, GPQA のスコアが、ステップを追うごとに着実に上昇していることが示されています。 * どのベンチマークも まだ明確に頭打ちになっていない → さらに RL を継続すればまだ伸びる余地がある、というのが著者の結論です。 ==== 4. 評価結果 ==== ===== 4.1 ベンチマーク ===== 表2(p19)に、主要モデルとの比較がまとまっています。INTELLECT_3_Technical_Report | モデル | AIME24 | AIME25 | LCB v6 | GPQA | HLE | MMLU-Pro | | ------------------------ | ------ | ------ | ------ | ---- | ----- | -------- | | INTELLECT-3 | 90.8 | 88.0 | 69.3 | 74.4 | 14.6 | 81.9 | | GLM-4.5-Air (post-train) | 84.6 | 82.0 | 61.5 | 73.3 | 13.3 | 73.9 | | GLM-4.5 (base) | 85.8 | 83.3 | 64.5 | 77.0 | 14.8 | 83.5* | | GLM-4.6 | 92.0 | 90.3 | 73.0 | 78.8 | 13.3* | 83.1 | | DeepSeek R1-0528 | 83.2 | 73.4 | 62.5 | 77.5 | 15.9 | 75.3 | | DeepSeek v3.2 | 88.1 | 84.7 | 71.6 | 81.4 | 17.9 | 84.6 | | GPT-OSS 120B | 75.8 | 77.7 | 69.9 | 70.0 | 10.6 | 67.1 | * 一部スコアは AA Index 由来。 ポイントとしては: * 同じGLM-4.5-Airベースでも、Prime Intellect版RLの効果がかなり大きい - 例:LCB v6 で 61.5 → 69.3(+7.8pt) - MMLU-Pro でも +8pt 程度 * 3倍大きい GLM-4.5 / 4.6 に対しても、AIME や LCB では肉薄 or 逆転 * 一方、GPQA / HLE / MMLU-Pro の一部では DeepSeek v3.2 がまだ上 → INTELLECT-3 は「GLM系の中では非常に強いが、全体トップではない」という位置づけ また、全モデル同一設定で評価するために、 * 可能な限り各社の公式APIを使用 * Environments Hub 上の公開実装を用いて再現可能性を確保 していると明記されています。 ==== 5. 結論と今後の課題 ==== 結論として著者らは: * INTELLECT-3 は 100Bクラスのオープンモデルとして非常に強い Reasoning/Agent モデル * それを支える prime-rl+verifiers+Environments Hub+Prime Sandboxes+H200クラスタ運用ノウハウ を一式OSS化したことが本質的貢献 * これにより「大企業のクローズドRLスタック」と「個人/小規模ラボ」のギャップをかなり埋えられる と主張します。INTELLECT_3_Technical_Report 今後の方向性としては: # Agentic RL のさらなるスケール - 現状でも報酬カーブは伸び続けているので、DeepDive や SWE など agentic 環境を厚くして継続学習すべき。 # よりリッチな RL 環境 - Environments Hub には既に500以上の環境(自律AI研究、コンピュータ操作、定理証明、ブラウザ自動化、法律・金融など)があるが、 INTELLECT-3 はその一部しか使っていない。 - これらコミュニティ環境をフル活用することで、現実タスクに近いスキルを強化したい。 # 長期ホライズンエージェントとコンテキスト管理 - 「コンテキストウィンドウは有限資源」とみなし、 - 自分でコンテキストを切り出す - サブタスクごとに自己プロンプトする - 外部メモリを自分で管理 といった機能を、できるだけシンプルなツールの組み合わせとして与え、RLで end-to-end 学習させたい。 - 最近指摘されている「Long context でも、実効的な reasoning window はかなり短い(context rot)」問題を、 RLで“自分で文脈を管理する能力”を学習させることで克服する狙い。INTELLECT_3_Technical_Report ざっくりまとめると、 : INTELLECT-3 は「GLM-4.5-Air を土台に、きっちり作り込んだ大規模非同期RLスタックで鍛えた 100B級オープンReasoningモデル」であり、 : 同時に「誰でも同じ手法で自分のモデルを鍛えられるようにするための、RLインフラ一式の技術マニュアル」 という位置づけのテクニカルレポートだと言えます。
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